たったひとりの君にだけ

こっちだよと手招きする樹のもとに、私を引き連れようとする。

強引にもほどがある。

私の意志は、無視ですか。


「……っ、瑠奈ってば!」


痛みを考慮せず思い切り引くと、瑠奈は全く動じることなく私を見た。

そして、何故かその顔には笑みが浮かんでいた。


「芽久美」

「な、なに」

「大丈夫、上手くやるから」


その一言を理解出来なくて、私は瞬時に眉間に皺を寄せた。

すると、瑠奈は力を弱めて手首を解放し、ゆっくりと話し出す。


「私だってバカじゃないよ。ただ、芽久美の親友として出来ることをするだけよ」

「……え」

「要は、神村さんに諦めてもらえるように上手く言えばいいんでしょ?」


予想外の提案に、私はわかりやすく固まっていた。
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