たったひとりの君にだけ
ようやく追い着いた私達を見て、樹は僅かに溜息を吐く。
「迷子になったら大変だからちゃんとついて来て」
「ごめんなさい、神村さん。女の子は歩くの遅いの」
わざとぶりっ子する彼女は、既に作戦の決行中なのだろうか。
今度は素直にその後ろを追う。
「でもやっぱりあいじま食堂行きたかったな~」
「だからこの誘いなんて断ればよかったんだよ」
「じゃあ、今から行き先変更しようよ」
「それは断固拒否する。例え奢りだとしても、私達のお気に入りの場所に樹なんか連れて行きたくない」
大切な場所を汚してほしくない。
私達の居場所のひとつなんだから。