たったひとりの君にだけ
それなのに。
「だから!芽久美には今、高階君がいるんだって!」
「でも彼氏じゃねえんだろ?じゃあ、俺が貰ったっていいじゃん」
「芽久美は物じゃなーい!」
信じた私が間違いだったのか。
そう思いたくはないのに思わざるを得ないようなこの状況だ。
『日本の冬は鍋だろ!』と自信満々の樹に連れられて行った先、純和風の鍋料理店に運よく待ち時間なしで入店出来たのはラッキーだったものの。
全室個室で向かい合い、リズミカルに言い合う二人は、本当にほぼ初対面なんだろうか。
「っていうか、高階、アイツ失礼だぞ。いきなりキレられたんだぜ俺」
「それは樹君が失礼な態度取ったからじゃないの?高階君は樹君と違って素直な青年なんだから」
「うっわ、瑠奈ちゃん酷いな~。俺だって自らの欲望に真っ直ぐに生きる、素直な好青年だけど」
「え、好青年?」
「なんでそこで疑問を抱く?」
「だって……まぁ、確かに顔はいいけど。ねぇ、高階君ってイケメンだった?」
「瑠奈ちゃん、会ったことないの?」
「うん、ないの。ねえっ、イケメン?かっこいい!?」
「まぁ、中の上ってとこかな。俺には到底及ばないけど」
それとも、アルコールが入った所為なのか、これほど不躾なのは。
目の前で自分の話をされることほど気分が悪いものはないし、しかも高階君の話まで。
話の全部がどうでもいいこと。
どうせなら知らないところでやってほしい。
第一、いつから樹君って呼ぶようになったのよ。
気持ち悪いにもほどがある。