たったひとりの君にだけ

耳を疑いつつも、若干のダメージを喰らった私はゆっくりと顔を上げる。

すると、実加ちゃんは何とも言えないような複雑な表情を浮かべて私を見ていた。


「ごめんなさい、メグ先輩」


そして、謝る彼女は給湯室の奥、私の隣に並ぶ。


「でも、気になっちゃって」


らしくない。
あからさまに動揺を隠せない。

こんなの、私らしくない。


「……なんで、樹の話が出て来るの?」


努めて冷静に聞き返すと、彼女は足元に視線を落として答える。


「ごめんなさい。実は、少し前に、……あの、ほら、真智子と飲みに行くから一緒にどうですかって誘った日、メグ先輩、先約あるからって断ったじゃないですか。あの日、見るつもりはなかったんですけど、帰り道に、メグ先輩が神村さんに似てる人と抱き合ってるの見ちゃって」

「抱き合ってない」


史上最悪な勘違いを、私は速攻で否定したけれど。


「じゃあ、やっぱりあれは神村さんだったんですね」


その反応が肯定だった。

完全なる墓穴。
情けない。
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