たったひとりの君にだけ
「……フランスに来いだって」
「えっ!イヤです!行かないで下さいっ!」
「行くわけないでしょ!」
行くわけない。
行くはずない。
負けず劣らずの大声で切り返すと、彼女は『あ~、よかった』とあからさまにほっとしていた。
その様子で微妙な気持ちに襲われつつ、私は静かに言葉を紡ぐ。
「……どうして行かなきゃならないの、どうでもいい人と」
「っていうか、別れを切り出したのってどっちなんですか?メグ先輩?神村さん?ちなみに理由はなんですか?」
「それは説明面倒だからノーコメントで」
クリスマス1ヶ月前なので私から別れを告げました。
とは言いたくないので、避けるのは言わば常套手段である。
「でも、一度は別れたのにヨリ戻そうだなんて、それほど好きってことじゃないんですか?」
「だとしても、私がフランスに行く理由にはならないでしょ。こっちにしてみればもう過去のことなんだし。迷惑なのよ」
強く言うと、彼女は黙った。
ケンカ腰の自分。
明らかな正論だけれど、こんなときこそ悠長に構えられないものか。