たったひとりの君にだけ

ホント、調子が出ない。


「……こんな話してたら面談出来ないね」


これ以上の醜態を晒す前に。
やめやめと言って、会議室へ行くよう促す。

誰だって傷は負いたくないものだ。

けれど、きゅっと、上着の袖を引っ張られた。


「え、どうしたの?」


振り返ると、彼女は私の目を真っ直ぐに見つめた。


「……メグ先輩」

「なに?」

「私、トレーナーになります」


何の脈絡もない。
突然の発言に、私が呆気に取られたのは言うまでもない。

すると、そんな私を置き去りにしたままで、芯の通った顔から一変、実加ちゃんはニコッと笑った。



「私、前の面談のときから気持ちは変わってません。トレーナーになります」



再度、彼女は力強く述べる。

けれど、有無を言わせぬ雰囲気を感じつつも私は、会社の先輩として、彼女の担当として冷静に言い返す。


「でも、もったいないと思うんだよね。本当にもったいないの。営業成績伸び続けてるし、部長もこのままいけばいいなって言ってたし」

「でも私、これから入って来る後輩が、自分らしくやっていけるように背中を押していきたいんです。……メグ先輩みたいに」


それでも彼女は譲らなかった。

その姿はまるで過去の再生。
私が感じたのと同じように。

2年前の自分を見ているかのようだった。
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