たったひとりの君にだけ
「じゃあ、大したことないならさらっと喋っちゃって下さい!」
心底楽しそうな様子に切り替えて壁に寄り掛かる彼女を見て、間違ったかな、と一瞬思ってしまったけれど。
少なからずこの2日で見るも無残な醜態を晒しているわけだし、たまには少しオープンになるのもいいかなと開き直ることにした。
「……実加ちゃんさ」
「はい、なんでしょう」
「自分と遠い人ってどう思う?」
ざっくばらんな質問に、『へ?』というアホの声が聞こえた。
だけど、当然の反応かなと思いつつ、何も知らない相手だからこそ切り出せるのも事実だ。
「えっと、例えば芸能人とかですか?」
「ちょっと違うけど、それでもいいかな。とりあえず遠い人よ」
「物理的にですか?え、宇宙人?」
「宇宙人じゃない。宇宙人には興味ない」
どうしてそうなる。
宇宙人がいるかどうかの疑問にも興味ないのに。
正解がわかったところで私の生活に何ら影響はない。
「じゃあ、物理的じゃなくて心理的ですか?」
「まぁ、そんな感じでよろしく」
「う~ん、わかりました。で、遠い人がどうかしたんですか?」
「そこはスルーして。一種の例え話だから」
そう、例え話。
有り触れた例え話だ。
「で、どう思う?」
「えっと、なんていうか、どう捉えればいいかちょっとわかりかねてますけど……」
「ごめん。説明下手で」
「いえ、メグ先輩は仕事でもなんでも説明上手ですけど、これは説明云々っていうのと違うような……」
わかりやすく困り果てる彼女を横目に、ミスったなと舌打ちしそうになった。
「う~ん」
「いいよ、そんなに本気で考えなくて。っていうか、やっぱり聞かなかったことにして」
「それは無理です」
意外にも高速で却下されたところで、私は素直に口を噤む。
後戻りは出来ないと知る。
一度言葉にしてしまった以上、取り返すことは出来ない。
すると、実加ちゃんは私にも聞こえるくらいに、ふうっと重めの息を吐いてこう言った。
「じゃあ、質問変えます」
「はいどうぞ」
「どうして遠いって思うんですか?」
あまりにもストレート過ぎて、今度は見事に言葉に詰まった。