少女達は夢に見た。
歩乃香が去ってから、少し経って。


窓の外の部活が終わりはじめた。


そろそろバスケ部も終わる頃か。


柚奈を迎えるために教室を後にして、下駄箱に。

下駄箱は外にある。


そのすぐ近くに体育館があって、バスケ部はそこで練習中。


バレー部も一緒。


うちの学校は男バスと男バレが無いから、なんとか場所は足りている。


下駄箱は少し、風が強くて嫌だけど。


もうすぐ終わるだろうし、ここで待っていよう。

下駄箱の側面にもたれた。


錆びてるから、汚れるかもしれないけど。


まあ、いいだろう。


さっきから待ってるだけで、暇になってきている。


柚奈は、なんて言うだろうか。


ほんとに待ってるとは思ってないかな。


「待ってなくてもよかったのに!」なんて言うのかな。


それでもきっと、嬉しそうに笑うのだろうな。


想像してみて、少し笑えた。


そんな私をよそに、次々とバレー部の方々が体育館からでてきた。


「ありがとうございました!!」


顧問の先生の話が終わると、いかにも体育会系な挨拶が聞こえてきた。


清々しい。


すると、また体育館の中の方で挨拶が聞こえてきて。


やっとバスケ部が終わったのか。


私はうきうきしながら、出てくるバスケ部員のなかから、柚奈を探した。

数十人もいるけど、間違えたりなんかしない。


すぐに見つけられる。


柚奈も私に気付いて、すぐに駆け寄ってきた、笑顔で。


嬉しくって、私も笑顔になる。


「お疲れさま!」


「うん、お待たせ。」


ジャージ姿で髪が濡れてる。


「…汗?」


「いや、暑いから水かぶったの。」


確かに暑いだろう。


「てか、本当に待っててくれたんだね。」


「うん。いやだった?」

うっとうしく思われただろうか。


真顔で言うから、少し不安になる。


「まさか。ありがとね!!」


そういって腕にひっついてきた。


ニコニコと笑いながら。

やっぱり…。


想像通りだ。


「ちょ!?汗かいたんでしょ?ひっついて来ないでよ!」


「いいじゃん、気にすんな!」


「気にするわ!!」


柚奈はずっとニコニコしている。


私も笑ったまま。


二人でふざけあう。


くっついてる柚奈から、制汗剤の香りがした。


オレンジとかの、柑橘系のさっぱりとした良い匂い。


「じゃあ、帰ろうか。」

ひっつかれていても、きりがない。


私が言うと、渋々離れてくれた。


自分で言ったくせに、少し寂しい。


バカじゃん。


なに考えてんの。


自分で思って、ちょっとおかしいと思う。


ちょうどバスケ部の人と、バレー部の人で、帰り道はごったがえしていた。


いつものように雑談しながら帰る。


少し、ゆっくり歩いた。

後ろにつかえて、速く歩かなきゃいけないのが嫌だったから。


後ろに人がいなくなって、ほっとする。


人が居なくなったのを柚奈も確認して、改めて口を開く。


「そういえば、一瑠って好きな人とかいないの?」
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