少女達は夢に見た。
なんだか少しイラつく。

「なんで。」


「なんでも、いないの?」


そんな純真無垢な顔して聞かれても。


そりゃあ、あんたはいいだろうよ。


好きな人がいるんだからさ。


しかも告白するんだろ。

「しいていうなら先輩かな。」


「あー。長岡先輩だっけ?女じゃん。」


笑いながら私の腕をちょずく。


あ、前話してたこと、覚えててくれたんだ。


「じゃあ、アキで。」


「まあ、カッコイイけどさ。」


そういう問題なのか。


柚奈の顔は本気だった。

カッコイイけどね、アキ。


「いないの?」


「いない」って、はっきり言いたくなくて、ふざけて答えてたのに。


ストレートに聞いてくる。


「いるって言ったらどうするの。」


ここでハッキリ答えられるほど、私は素直じゃない。


「応援する!…かな。でもいないでしょ。」


いたずらっぽく笑う。


「応援…か。」


なんだか、いやだな。


突き放されたような、気がした。


「柚奈は応援される側でしょ。」


恥ずかしそうに笑った。

告白したら、付き合うんだろうな。


なんとなく、そんな気がした。


柚奈が振られるとは思えない。


友達だから、ひいき目に見ているのだろうか。


「うん。」


煮え切らないような表情で頷いた。


不安なのだろうか。


でもすぐに他の話題にうつりかわる。


気のせいだろうか。


なんだかいつもより落ち着きがない。


無理矢理話をそらしてるのが見え隠れして。


微笑ましいな。


そんなことを考えながら、適当に柚奈の話にあいずちをうつ。


柚奈は終始笑顔だった。

いつも通り、青信号を何回か見送って。


ふざけあいながら別れる。


いつもは、家に帰っても楽しくてニヤニヤしてるけど、今日は直ぐに笑顔が消える。


「結局誰か、まだ知らないじゃん。」


誰もいないから、独り言を。


柚奈の好きな人、ききそびれたな。


今日、少し柚奈のまわりを観察してたけど、わからなかった。


聞いたら誰か教えてくれるだろうか。


聞きたくないけど。


やっぱり気になるものは気になる。


「はあ…。」


溜め息をついて、大きく息を吸う。


柚奈が告白するまで聞かない!


よし、決めた。


そうすると、何故か清々しい気持ちになれて、いつものように「ただいま」を言えた。


取り合えず着替えて、ケータイを手にとる。


登録サイトからのメールに一通り目を通して、削除。


まだ家についていないだろう柚奈にメールを送った。


20分くらいたって、家についたらしい柚奈から返信が来て。


それから、数分単位で往復する。


どうでもいいような話ばかり。


でもそれが楽しい。


メールの合間に夕飯を済ませて、お風呂にはいる。


しばらくテレビをみて、部屋に戻るとメールが来ていた。


「おやすみ」を最後に送る頃には寝てもいい時間になっていた。


約一ヶ月続いている日記を書いて。


最初は10行位だったのが、半分になってきてる。


それでも後から見返したりしたくて、つけ続ける。


一ヶ月前の自分を感じて、鼻で笑ってみた。

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