少女達は夢に見た。
それから数日。


まるで“自分”という役が与えられたような気分だった。


いつも通り、起きて朝食をとり、テレビをみて、勉強して。


漫画を読んで、読書して、ネットして、音楽を聞いて。


なにも楽しいことが無い…というわけではなかったのに。

柚奈と勉強会。


数学を教えて、ふざけあって、笑う。


なのに、まるでどこからか自分を眺めているような。


自分の感情なのに、なにか特別なフィルターを通って、真っ白になって。

臭いものには蓋をする


感情、思考回路、結論。

全部、見ないふりをして、殺した。


それだけで、私は“自分”を失っていた。


普段なら高確率で選ぶ道を選ばないようにした。

ただ、それだけのことだったのに。


まるで、今までそれしか考えてなかったみたいじゃないか。


そんなわけ、ないの。


なのに。


気持ち悪くなる。


胸の辺りまで、ピンポン玉が上がってきて、食道を塞がれてしまうような。


そんな感覚に、たまに襲わる。


思い出すたび。


考えてしまうたび。


そんな風に考えてはいけないこと、わかってたから。


だから、見ないふりをしたのに。


自分から、それを切り離したのに。


一緒に“自分”も体から引き離されてしまうだけ。


激しく、ドクドクと、心臓が動く。


静かなその部屋で


ベットの上


枕に耳を押し当てれば、鼓動が聞こえる。


生きてるんだ、これ。


遠くから眺めるように、そう思ってた。


大きく息を吸って、


止める。


すると、次第に鼓動の音は小さくなっていった。

聞こえなくなりそうなほど小さくなったところで、


苦しくなり、大きく息をはいた。


また、鼓動の音が大きくなる。


少しはやめに。


深く呼吸をして。


心臓の音を聞いていたら、少し落ち着いてきた。

「なにやってるんだろ。」


勉強する気にも、なにをする気にもならない。


頭がぼーっとする。


なんだこれ。


眠りそうになってきた所で、意識が覚醒する。


「やば。英語の課題あったんだ。」


今からやらないと間に合わない。


1時間はかかるぞ。


明日の…何時間目だったっけ。


木曜だから…1時間目じゃないよね。


じゃあ、学校で半分やれば間に合う?


だめだ。


今やらなきゃ。


だるい体を起き上がらせる。


「メールは…来てないよね。」


少しほっとした。


うつろな思考回路で、とり進める。


あれ…これなんだっけ。




結局終わるまでにうたた寝したりして、終わるまでに時間がかかった。


手早にお風呂にはいる。

再びベットについたのは12時過ぎだった。


はやく、寝たい。


それで、明日が来なければいいのに。


明日は木曜。


柚奈が、告白する日。

< 21 / 106 >

この作品をシェア

pagetop