少女達は夢に見た。
それから雑談したり、動画サイトを二人でみたりして、


あっという間に、歩乃香が帰宅しなければいけない時間になった。


歩乃香はずっと楽しそうで。


間が持たなくなる…なんてことは無かった。


むしろ、心地良いくらいで。


「じゃあ、気をつけて帰ってね。」


「うん、見送りありがとね。一瑠ちゃん。」


帰り道の途中まで送って別れた。


歩乃香は、どうして泣いたんだろう。


ずるいことって、一体何を考えてたんだろう。


「早く仲直りしてね…か。」


どうしたらいいんだろう。


歩乃香には、柚奈の気持ちが分かったのだろうか。


いくら考えても柚奈の気持ちが分からない。


でも風見君にフラれたのなら、傷ついてるはず。

一人で泣いたりしているのだろうか。





夜9時30。


ケータイを開き、柚奈のプロフィールから、電話をかけた。


コール音が聞こえて、ドキドキする。


なかなかつながらない。

きってしまおうかと思ったとき、


「もしもし。」


柚奈の冷たい声が聞こえた。


心臓が跳び跳ねる。


「柚奈?私だけど。」


「知ってるよ。ケータイからかけてるんだし。」

当たり前だ。


だけど、私だと分かっていても電話をとってくれたことが嬉しかった。


「なんの用。」


「あ、あのさ。柚奈、大丈夫?」


自然と、そんな言葉がついて出た。


「一瑠…。」


柚奈に、ちゃんと名前をよばれるのが久しぶりだった。


「なにもできなくて、ごめん。」


電話の向こう、柚奈の表情が分からない。


声から大体想像できるけど。


「一瑠は、悪くないから。」


昼間と同じ言葉。


「あたし、フラれたの。風見君に。」


もうほとんどわかりきっていた。


だけど、それを柚奈本人から聞くのはまた別で。

「あたし、わかってた。」


「え?」


「フラれるって、わかってた!」


耳が痛くなるような大声。


震えてる声に、胸が痛くなる。


「どういうこと?」


それでも私には、柚奈の気持ちが分からない。


聞くのは怖かったけど。

知らないままはもっと嫌で。


柚奈は、だまる。


嫌な沈黙。


重くて、重くて。


息がつまる。


電話、きられてしまうのかな。


あまりの沈黙の長さに、心配になる。


「…柚奈?」


「知ってた。」


静かで冷たい声。



だけど、昼休み聞いた声とは全然違う。


いまにも崩れそうな。


そんな声。


ケータイを持つ手が汗ばむ。


「知ってたよ。」


柚奈の声に耳をすませる。


「言われる前から知ってたの。」


「うん。」


「風見君に、言われる前から…あたしは気づいてた。」


「うん。」


「風見君が好きなのは…あたしじゃなくて…一瑠だって。」




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