少女達は夢に見た。

「えぇっと…」






カナンは私が話終えるまで、待っていてくれた。

視線をしっかり合わせて、深くうなづいて。


あまりに真剣に聞いていてくれるから、恥ずかしかった。


だけど安心して。


別に部活くらいでしか話さない仲で、
簡単に説明するだけにするつもりだったのに


事細かに話してしまっていた。


意外だったのは、柚奈が風見君を好きだったことを知っていたこと。


実は噂になっていたらしい。


一体どこから広まったのか…


私は思う存分カナンに話して満足していた。


後悔と期待。


全部話してしまったけど、カナンなら分かってくれるかもしれない。


相対しているはずの感情がぐるぐる。


「それってさ…」


「う、うん」


「変だよ」


「あ…」


言葉が、刺さった。


恋する乙女の“友達なんて”と、おんなじくらい痛い。


いやもっとだ。


表情には出さない。


カナンの真意を知るため、聞く。


「どこが？」


「全部。柚奈も一瑠もおかしいよ。風見が可愛そう」


トーンを落として言うからなんだか別人みたいでゾクゾクする。


「おかしいよ、絶対おかしい」


「普通だよ？全然おかしくなんかないよ…」


おかしくなんてないよね。


おかしいのは、カナンだよ。


そう思ってるのに、カナンみたいに強く言えない。


カナンは私を睨み付ける。


怖い顔。


「それに、柚奈と風見君じゃつり合わないよ。」

「口きかないでなんて言う柚奈も柚奈だけど…ばか正直にそれに従う一瑠もおかしい。」


なに…


カナンは何言ってるの？

なんでそんな非道いこと言えるの。


別に柚奈が言ったのは“好きにならないで”だけで、


口をきかないのは私が勝手にしていること。


それを伝えたら、もっと怖い顔をした。


なんで？


なんでそんなに怒るの？

「がっかりだよ、一瑠」

意味不明。


私だってがっかりだよ。

期待したのに。


私の欲しい言葉をくれるかもしれないって、


期待したのに。


返せ。


私の言葉を返してくれ。




カナンにそんなことを言われた後、柚奈を待つつもりにはなれなかった。

あんなこと言われるなら、話したりなんかしなければよかった。


だけどひとつ、分かったことがある。


歩乃香は、もしかしたら私に嘘をついたのかもしれない。


本当は先輩達のことは有名じゃなかった。


カナンが知らなかっただけ…じゃないと思う。


柚奈の噂は知っていたんだし。


だけど今の私には、それを歩乃香に確認する気力がない。


そしてその気力は、一ヶ月ほど沸くことはなかった。