少女達は夢に見た。
そして夜、柚奈からメールが来た。


〈そういえばてるちゃんが火曜日に追試するっていってたー〉


追試…。


抜き打ちテスト15点以下は追試って、誰かが言ってたな。


本当にやるんだ。


大丈夫かな、柚奈。


文面はまだ続いていた。

〈だからもし25点以上だったらなにかご褒美ちょうだい?〉


〈わかった。なにがほしいの〉


正直、なんで私がご褒美なんてあげなきゃいけないのかと思った。


だけど、それで柚奈のやる気が上がるなら安いものだ。


ここは一肌脱ごうじゃないか!


友人として。


そう返信してすぐ。


ケータイの着信が鳴った。


「……電話?」


このタイミングだ。


もしやと思い画面を凝視する。


やはり柚奈だった。


「もしもし?なんでわざわざ電話してくるの」


少し興奮しながら、落ち着かせるようにベットに座った。


「えへー?」


骨が抜けたようなくてんくてんの声が、電話越しに聴こえる。


「なーんか嬉しくなっちゃって!」


柚奈の笑顔が頭に浮かんだ。


「それに、電話のほうが早いかなって。」


それでわざわざメールの途中に電話してきたわけか。


直感のままに生きてますって感じだね。


まあそりゃあ私だって、メールより電話のほうが嬉しいけどさ。


「そうだ、ご褒美ってなに?」


「あ、うん。目標いったらご褒美ちょうだいね。」


「だから、なにが欲しいの。言っておくけどあまり高価なものは……」


“無理だからね”


そう言おうとして言葉を飲み込んだ。


「どっか行こうよ。2人で。」


いつもよりずっと落ち着いた柚奈の声。


なんだろう。


電話越しだと全然違う人の声に聴こえる。


「どこか?」


「うん。どこでもいいよ。」


確かここらに遊べるような場所はなかったと思うんだけどな……。


どこでもいいって言われるのが一番困るよ。


それに、それじゃあいつもと変わらないし、ご褒美にはならないんじゃないかな。


「あ。」


「なに?」


「やっぱお互いの家とカラオケ、図書館は無しね。」


……定番スポットが潰された!


それ以外なにもないのに。


選択肢を狭めるなら自分から行きたい場所を言ってよ……。


ぐてん、とベットに倒れた。


困った。


どうしよう。


「じゃあよろしくね。」


「なんか…目標点数取るのが決まってるみたいな話方だね。」


すっかりその気になっている柚奈にこっちも乗せられてしまったけど、


「分かってる?前回の3倍以上の点数をとらなきゃいけないんだよ?」


「が、がんばるから!!」


……がんばる、か。


今までがんばってこれなかったのに、こんなご褒美ひとつでがんばれるってか……。


本当に単純のおバカさんだね。


「もちろん10点代ならお仕置きですからね?」


「いーちーるーがーこーわーいー!!」


「そんな“我々ハ宇宙人ダ”的なノリで言われても……」


そんなこんなで夜はふけた。


柚奈、本当に大丈夫かな?



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