あたしの心、人混みに塗れて
「わかってるよ」


蒼ちゃんが囁いた。


「俺もあの時、最初から自分で最低なことをしてるってわかってた。でも、どうしてもほっとけなかったんだ」


あたしだってわかっている。蒼ちゃんはただお人よしだけでやったのだ。単純に人として放っておけなかった。蒼ちゃんはそういう人間だ。決して他意はない。


「俺が守ってやりたいと思う人はともの他にいる。その度にともを傷付ける。最低なのはわかってる。でもね、とも、俺が今も昔も隣にいてほしい人はともで、俺が守って俺を守って欲しいと思うのはともだけなんだよ」


意味、わかる? と蒼ちゃんがぼそりと呟いた。


「…………わかんない」


いや、わかっている。でも、早口言葉みたいで頭が混乱しかけている。


ばかなあたしでも理解できる言葉で言ってよ。


「ずっと一緒にいたいと思うのは、ともだけ」


蒼ちゃんがあたしを離して、鼻が触れるくらい顔を近づけて、これでわかった? と聞いてきた。あたしはその距離感を気にしながら頷いた。涙はいつのまにか乾いていた。


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