あたしの心、人混みに塗れて
「理央とはとっくに切れてるから、安心して」

「とか言って、また他の女を捕まえたりして」

「ひどい。俺、意外に一途なんだからね」

「よく言うよ。あたしが男苦手だからって安心してんだよね、蒼ちゃんは。だったら、あたしも他の男と浮気してこようかな」

「ちょっととも、怒るよ。ともは栗山くんの件で十分。俺がどんだけ妬いたと思ってんの」

「やだ蒼ちゃん、忘れてたのに思い出させないでよ」

「自分の元彼でしょうが」


あたし達は顔を見合わせて笑い合った。


「ともとの赤ちゃん、欲しいんだけど」

「気が早い。日を改めたまえ」

「ていうか、ともから返事をもらってないんだけど」

「何の返事よ」

「俺の、ずっと一緒にいたいってやつの返事」

「え、それ返事必要だったの」

「いるでしょ、普通」

「今まであたしの許可を悉く取ってこなかった蒼ちゃんがよく言うよ」

「まあね。ていうか俺、会ってなかった間も別れたとは思ってなかったし」

「何それ」

「まあ、いわゆる冷却期間的な?」

「ずいぶんポジティブな頭だこと」

「で、どうなの」

「どうなのって」

「一応、プロポーズのつもりなんだけど」

「はああっ!?」

「だってずっとって、一生ってことでしょ。さすがに結婚は双方の同意が必要だからね」


何その、さも当然のこと言いました的な言い分は。


しかもそんなことを言われたら、こっちが言いたくても言えなくなるだろうが。


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