Under The Darkness



 栞ちゃんは腑に落ちないって顔で考え込んでる。

 その手には、すでに3本目のビールが握られていた。


「なんか美里のこと頭から食ろうたろって顔して、絶対美里から視線逸らせへん。あの男、正直、敵や思ったもん」


「敵?」


 ぼんやりしてきた頭をこてんと傾げた。


「うちは美里のこと嫁にもらお思てるんやから。美里に懸想するヤツは性別問わず全員敵や。殺す」


 フッと片唇だけで黒く笑む栞ちゃんが、常になく極悪非道な悪人面になっていて。


「こ、怖いで? 栞ちゃん」


「大丈夫や。完全犯罪なんて案外容易いんやで?」


「こ、こわっ!」


 一瞬で頭が明瞭になる。酔いが覚めた気がした。

 仰け反ったときに座った椅子がギギッと音を立てて後ろに下がる。


「美里はアホやから、うちが守るんや。悠宇なんてツボ間違うとるエセヘタレじゃ話にならん。眼鏡男も陰険そうやし論外や」


 栞ちゃん、完全に目が据わってる。

 アブナイ何かのスイッチが入ったんだ、きっと。

 握りしめるチューハイの缶がぺこりとヘコんだ。

< 106 / 312 >

この作品をシェア

pagetop