Under The Darkness
「残念ですが。貴女はもう私からは逃れることは出来ません」
はっきりと、それは不可能なのだと京介君は断言した。
固まる私の耳朶を舐め上げ、ビクリと跳ねる私を見て、喉の奥でククッと嗤う。
「くぅっ、いやや……は、なせ! 絶対、絶対、逃げたるんやからっ」
抵抗するべく振り上げた手を押さえ込まれ、鬱血するほどきつく掴まれる。
耳元から首筋へと舌先が移動してゆく生温い感触に、私の背がゾクゾクと戦慄した。
自分の内に沸き起こる不可思議な感覚を打ち消すように、必死で身を捩らせる。
「逃げてみたらいい。どんな手を使っても。必ず捕まえてみせる」
意地の悪い声に真剣さが混じる。
私は目を瞠った。
京介君が冗談を言ってるようには見えなくて。
「他の男の元へ逃げようなどと考えたら、その時は貴女を殺します」