Under The Darkness





 美里さんはある時期を境に、誰とも接触をしなくなった。

 小学生の頃までは、美里さんは無邪気な笑顔を周囲に振りまく人懐っこい性格をしていた。それが、中学へ進学した辺りから、笑顔だけでなく表情までもが消え失せてしまったのだ。

 けれど、なぜ美里さんが変わってしまったのかなんて、特に興味はなかった。

 いや違うな、私は嬉しかったんだ。

 誰も寄せ付けない、孤独の中にいる美里さんを見ると、凶暴な感情がナリを潜め心の平穏を保つことができたから。

 私の手の届かない場所で、屈託なく無邪気な笑顔を振りまき、他を魅了し続ける彼女の姿など見たくはなかった。

 ――そんな姿、誰にも見せたくなかった。

 美里さんは誰にも心を開いていない。その事実を目の当たりにする度、私の心は驚くほどに凪いだ。


 今もなお、美里さんは孤立無援、孤独に沈み囚われたまま。


 その現状を確認するためだけに、私は父さんと共に大阪へ行くのだ。



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