Under The Darkness
一通り暴力を加え終わると、私はそのまま倒れこむ美里さんの元へと恐る恐る近寄った。
カラコンが涙に流され、美里さん本来の萌葱色の瞳が現れている。澄んだ瞳は、今は恐怖に歪みくすんだまま、何もない壁をじっと見つめていた。
顔面蒼白で身体全体が小刻みに震え、唇も色を失っている。
「美里さん、怖かったの?」
小さな子供を慰めるような口調で問う。
私は涙に濡れた彼女の頬にそっと指先で触れようとして、ハッと目を見開いた。
指先が、美里さんの頬に触れる寸前で止まる。
血に濡れている、穢れた手。
汚れを自分の服に擦りつけ、綺麗に拭ったつもりだったが、穢れは落ちなくて。
血に濡れた自分こそが彼女を恐怖に陥れる存在に思えて。叩きのめした男と同類に感じて、唇が切れるほどに噛み締めた。
やるせない思いが胸を浸してゆく。
「もう怖くないよ」
怖い存在は、もういないはず。
私がぶちのめしたのだから。
でも。
血に濡れ、もうとっくに穢れてしまっている『私』こそが、彼女にとって真に怖い存在ではないのか――?