Under The Darkness






「絶対に逃がすものか」



 父さんのようなヘマはしない。

 やっと捕らえた美しい蝶を、誰がおめおめ逃がすものか。

 例え血が繋がっていようとも、そんなものは些末な問題だ。

 それすらも彼女を絡め取る手札となる。

 彼女を追い詰めることができる駒を、利用しない手はない。


 ――追い詰めて逃げ道を全て潰し、彼女が守るものを全て奪い尽くして。そして、彼女の高い矜持を挫き、貶め、逃れられないほどに、私に溺れさせてやる。


 悠宇にも栞にも頼れない状況を作り、彼らに近づいてはいけないと思わせ、再び彼女を孤立させる。

 そうなった時、最後に頼れる者は私だけになる。

 私に縋るしかなくなる。


 ……その日が待ち遠しい。


 ――まあ、そうなる前に、先に孕ませてしまうつもりだが。


 ふふっと唇からは笑みが零れる。

 美里さんの言う通り、自分でも大概鬼畜だと思うが、そこはもう諦めて貰うしかない。



 なぜなら、私は彼女を離すつもりなど、欠片もないのだから。



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