Under The Darkness





「あ、あんな、昨日のことやねんけどな」


 私は気になって仕方なかったことを、まごつきながらも口にした。

 悠宇はハッとした顔で、探るような眼差しを向けてくる。


「……なんやすぐ電話切れてもうたから、オレすぐに警察に連絡したんや」


「あっ、そうやな、ありがとう。おかげで助かった」


 警察が来た事なんて全く知らなかった。

 でも、何故その場に居たはずの私がそれを知らないのか、知ることができないどんな状況にあったのか。

 それを説明することも、全てを知られることも嫌だったので、私は真実を濁して礼を言う。

 作り笑いを浮かべる私を咎めるように、悠宇はすうっと目を眇めた。


「……そう。よかった。大事なくて」


 昏く沈んだ声。けれど、次の瞬間浮かんだ笑顔は、どこかぎこちなくて。

 私は「おや?」と首を捻った。

 なんだろう。今、もの凄く違和感を感じた。

 いつもは屈託なく笑う悠宇だが、なんだか今の笑顔はいつもと違うって感じたんだ。


 その違和感の正体は、この時の私には知るよしもなかった。




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