Under The Darkness





「うん。ありがとう、悠宇」


 私を守ってやる、そう言ってくれた悠宇の力強い言葉に、私は曖昧に微笑んだ。

 私、分かってる。

 悠宇は京介君には敵わない。

 もし、京介君が私を探しに来て、悠宇に迷惑がかかるようなら。

 私は再び京介君に囚われねばならないだろう。
 

 私の大切なものを、守りたいものを、決して傷つけさせはしない。

 大切なものを傷つけられるくらいなら、私が再び囚われることになっても構わない。

 例え、そうすることで犠牲が生じたとしても。

 私は左手首に填めたリストバンドを隠すように握りしめながら、強くそう思った。

 考えに沈み込んでいた私に、悠宇は不安げな顔を向ける。


 私はいつものような明るい笑顔を悠宇へと向け、話を逸らした。


「悠宇、アンタご飯自分で作られへんやろ? どないしてんの? 今」


「あー、コンビニかファミレス?」


「そんなんばっかり食べてたら、大きいならへんで? 今日は私が作ったるわ。あっこのマンションのキッチン、IHやから安心して料理できるし」


「やった! 実はチョット期待しててん」


 ――でもオレ、身長188あるんですけど。


 大きくならないと言った私の言葉が気に入らなかったらしい。

 悠宇はムーッと唇を尖らせた。


 いつも通りの雰囲気に戻ったと、私はホッと胸をなで下ろした。


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