Under The Darkness
自宅に着いた私は、キーを取り出し鍵を開けたんだけど。
「……あれ? 綺麗や」
部屋はきっと埃まみれになっている、そう思っていたのに、綺麗に片付けられすぐにでも生活が出来そうなくらいだった。
日本を出る際、お父さんにこのアパートは絶対引き払わないでと、我が侭を言いお願いしていたのだが、まさかここまで綺麗に現状維持してくれているなんて思わなかった。
後でお父さんに電話して、ちゃんとお礼を言わないと。
「――……ただいま、ママ」
私は、仏壇の前に座るとママに帰国の報告をした。
「五年以上も留守にしてもうて、ごめんね」
私、もう大丈夫だから。
ちゃんと踏ん切りをつけてきたつもり。
例えば京介君に婚約者とかいてても。
結婚とかしてても。
ちゃんと、『よかったやん、おめでとう!』って言える。
言えるようになったから、こうして帰ってきた。
五年半もかかってしまったけれど。
ふうっと溜息をつくと、私はべたつく身体を洗い流そうとそのまま浴室へと向かった。
コックを捻ると水は出たが、やっぱりお湯は出なくて。
冷たい水のまま私はシャワーを浴びた。
熱くほてった頭と身体を冷やすにはちょうどいい。
――……ほんま、私ってしつこいな……。
一度京介君に対して芽生えてしまった『愛しい』という想いは、彼を誰にも渡したくないという独占欲は、そう容易く消せるものではなかった。
あのまま日本にいたら、きっと私は京介君に甘えて、この執着ともいえる独占欲で縛ってしまいそうな気がしたから。
だから、離れた。
京介君には普通の人生を送って欲しい。
大人になって、冷静に考えて。
私を選んでしまうと、マイナスにしかならないって気づいて欲しかったから。
姉弟で恋愛なんて――そんな重いものを、彼に荷せたくはなかった。
出合ったときはまだ若かったから、京介君が若気の至りだったと思える程に成長するまで、離れた。
そして、連絡が途絶えて一年。
その時が来たから、私はこうして戻ったんだ。