Under The Darkness







「アイツ?」


 京介君の訝しむ声。でも、私はもういっぱいいっぱいで。


「……あかん……、お願いや、悠宇に、栞ちゃんに逢わせて」


 もう、心が限界だと訴えていた。

 やっと取り戻した日常が、平穏が、壊れてゆく気がした。


「……逢わせない」


 京介君の頑なな言葉。

 それでも、私の平穏は彼らの傍にあった。

 悠宇と栞ちゃん、そして、ママ。彼らが傍に居てくれたから、私はやっと平穏を取り戻すことが出来たのに。


「逢わせて、お願いやから」


「――馬淵さん」


 窘めるような医師の声。京介君、鋭い舌打ちを響かせた。


「一度だけだ」


 その言葉に、シーツに埋めていた顔をガバッと上げた。


「っ!! ありがとう!」


「電話番号を教えろ」


 私があんまり喜ぶので、京介君、もの凄く不機嫌な顔で睨んでくる。

 でも、栞ちゃんと悠宇にまた会えることが嬉しくて。


「う、うん! 分かったっ!!」


 私は、弾む気持ちを抑えられなかった。





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