Under The Darkness
炎症止めの軟膏と解熱剤をサイドテーブルに置き、医師は部屋を後にした。
バタンと扉の閉まる音が重く室内に響く。広い部屋には私と京介君だけが残された。
「で? 過去、貴女に何があったんですか」
口調がお前から貴女に戻った。
さっきまでの乱暴な言葉から丁寧なものへと変わる。
私が横になるベッド脇のチェアへと腰掛けた京介君は、丁寧な口調で、けれど有無を言わさぬ威圧を纏い、質問してくる。
私はムッと顔を顰めた。
「……また仮面被っとる。本心見せへんのは、薄気味悪くて嫌いや言うたやん」
私はつんと顔を背けて、京介君を見ない。
説明を求められても、したくなかった。
過去をほじくり返されるのは苦痛だった。
「……煩い女だな。何があったと聞いている」
丁寧口調が再び傲岸なものへと変わる。
でも、不機嫌な声だけは変わらない。
シーツを首元まで上げて、顔だけ覗かせたまま、土足で私の中に入ってくるなと全身で拒絶した。
「……ええやん、そんなん。私のこと、憎いんやろ? ほっといたらええんや」
京介君を真似て、平坦で感情のこもらない口調で答えを返した。
「……出来るならそうしてる」
不本意だといわんばかりに、京介君はそんなことを呟く。
思わず私は振り返った。
子供が拗ねたような、手に余る感情をどうしていいかわからないと言ったような、ぶすくれた京介君の顔。
初めて見るその表情に、私、驚いてしまって。
なんだか新鮮で、可愛くて。
私は小さく吹き出した。
途端、京介君の目が忌々しいとばかりに凶悪に眇められる。