この恋、国家機密なんですか!?
「……篠田さん?」
思わず立ち止まってしまったのはむこうも同じで、不思議そうな顔をした連れに、つんつんと腕をつつかれていた。
「ああ……すまん、なんでもない」
「あ、もしかして……」
「違う。何でもないんだ。行くぞ」
宗一郎さんは吐き捨てるように言うと、連れの手を引いて、ずんずんと歩いていってしまう。
何よそれ……なんでもないって。手までつないじゃって。
私はあなたにとって、「なんでもない」存在なわけ?
明らかに、二股がバレた男の対応じゃない。
「あの……添乗員さん?鬼のような顔をしていますけど……」
「はっ!!」
しまった。またやってしまった。
「す、すみません。ええと、ランチバイキングでしたっけ?」
「タワー丼です」
「あ、ああああ、そうでしたね、タワー丼……」
冷静を装いながらも、スマホを持つ手がぶるぶると震えてしまった。
頭では仕事をしなきゃと思っているのに、心がついてこない。
それでも私は、ガイドブックを持ってお店に電話する。
「はい、今から20名様ほど……入れますか?はい、多少の待ちなら……」
浮気……っていうか、本気?
本命はあっちだったの?
くっそー、あの切なげな別れはいったいなんだったの!