この恋、国家機密なんですか!?


最初に忠告したとおり、神社の周りには特に何もない。

東京に帰っても見られるような街並みなので、待っていてくれた旅館の人の車で、えっちらおっちら嵐山まで行った。

そびえる山々に、ゆるやかなカーブを描いた渡月橋。

私は仕事で慣れているから、何度も見た景色。

去年も何組かの修学旅行生を運んだなあ……。

っていうか、最初からこの近くの神社に来れば良かったような……。

ま、いいんだけどね。色々なところを見て回るのが旅行の楽しみだよね。

と、たまには添乗員っぽいことも言ってみよう。


宗一郎さんは人ごみよりも自然の風景が好きみたい。

だから、渡月橋の上から川の流れを見て、ぼんやりしていた。


「……さすがに寒いですね……」

「ああ……腹も減ったな……」

「おいしい湯豆腐を食べさせてくれるお店があるんですが、行ってみましょうか?」

「それは名案」


さすが添乗員だな、と宗一郎さんは感心していた。


まあ、嫌というほど来ていますからね、このへんは……。

小さなお店は混んでいたけど、それほど待たずに座ることができた。

私たちは温かい湯豆腐を食べて、旅館に戻った。





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