ラスト・ジョーカー
第四章 きみが呼ぶ名前

*第四章 きみが呼ぶ名前 1*


〈ユウナギ〉を出て五日――エルたちが麻由良の隊商に入って二日が経った、晴れた日の昼下がり。



 隊商の幌馬車の上に乗ったエルは、穏やかで心地よい陽光を見上げて伸びをした。



 なぜ幌馬車の上にいるかというと、隊商に置いてもらっている以上はなにか隊商の仕事を手伝いたいと申し出たエルに、麻由良が見張りの仕事を与えたからだ。



 大きな幌馬車の上なら隊商の皆の視界にあまり入らないし、エルの視力聴力をもってすれば遥か遠くにいる盗賊も、

地の底深くにいる砂漠生物も近づく前に察知できる。


それを考えての人選だろう。



 ちなみにゼンやアレンは隊商の者たちに混じって馬の世話や荷運び、料理を手伝っている。



 だが、見張りの仕事を任されてよりこちら、一度も異変が起きたことはなかった。



 砂漠生物はモウセンゴケを倒したエルを恐れてか姿を現さないし、盗賊はそもそもめったに現れないのだ。



(閑職、だよなあ)



 別に文句があるわけじゃないけど、とエルは苦笑して立ち上がる。

ずっと座っていて肩が凝ったのだ。



 移動中のため幌馬車は当然揺れているのだが、その上に立つエルは少しもふらつかない。


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