ラスト・ジョーカー

*第一章 この命は誰のもの 4*



 スメラギの言っていた迎えは、翌日の正午にやってきた。



 ウォルター・アシュクロフトと名乗った迎えの若い男は、

エルのそれよりもいくぶんか明るい赤色の髪をして、それと同じ色の眼は眠たそうに垂れていた。


彼は支配人からエルの檻の鍵を受け取ると、驚いたことに、エルに檻から出るように言った。



 自分を逃げないように閉じ込めておかなくていいのか、とエルが問うと、



「やだよ。檻ごとアンタ運ぶとか、重いじゃん。

それともなに、逃げんの? だったら閉じ込めとくけど?」


 と、ウォルターは答えた。



 エルはぶんぶんと頭を横に振った。


そしてその通りに、逃げるそぶりは一切見せなかった。



 ただウォルターに促されるままに車に乗って、じっと黙っていた。


自分をどうするのか、スメラギは一体なに者なのか、訊きたいことは山ほどあったが、ウォルターが質問を受けつけなかったのだ。


これからどこに行くのかと、エルが尋ねたときには、〈塔〉とだけ返答があったが、エルがそれ以上尋ねようとすると、


「めんどくさいから質問禁止ねー」


 と言って、眠たそうにあくびをした。




 質問を禁じられたエルだが、決して退屈はしなかった。


夜の歓楽街と殺風景でグロテスクな見世物小屋の中以外の景色を見たことのないエルにとって、

車の窓から見える景色は珍しくてしかたがなかった。


無愛想な高層ビルも、風を上げて通り過ぎていく車も、ただの街路樹でさえも。


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