ラスト・ジョーカー

*第四章 きみが呼ぶ名前 5*



 誘拐犯の男を放り込んだ部屋の前から立ち去るウォルターの隣には、青い髪の青年の姿があった。


男を背後から部屋に突き飛ばしたのは、男の隣にいたウォルターではなく、彼だ。



「残念だったねえ、アレン?」



 暗い廊下をちんたらと歩きながら、ウォルターは隣を行く青年――アレンに声をかける。



「せっかくアレンが『ゼンに正体がバレて逃げられた』ってスメラギ局長に嘘ついてまで、あの二人を逃がしたのにさあ。麻由良がぼくらに救助を依頼したせいで、ゼンの居場所、わかっちゃったね」



「……嘘じゃ、ないよ」



 嘘だった。ゼンには正体を悟られていない。


アレンがスメラギ直属の〈トランプ〉特務防衛員――ジャックだということなど、ゼンもエルも知らない。



 アレンの嘘など見通しているウォルターは、呆れたようにため息をついた。



「もうバレてんだから、悪足掻きはやめときなよ。命令に背くなんて、アレンらしくないなあ。あの二人に情でも移ったわけ?」



「……行こう。二人を捕まえるんだろ」



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