ラスト・ジョーカー

*第五章 二人のひとりぼっち 3*



 エルが目覚めたその日の真夜中。


誰かの声を聞いた気がして、エルは目を開いた。



 夜になったからとりあえずベッドに横になってみたはいいが、三日も眠っただけあってなかなか寝付けないでいたのだ。



 起き上がってベッドから出ると、冷たい空気が体を包んだ。


そういえば、ベッドに入る前に部屋の暖房を切ってからずいぶん経つ。



 もう一度耳をすましてみても、なにも聞こえない。


気のせいだったのだろうか、と首を傾げたとき。



――う……。



 うめくような声が確かに聞こえた。おそらくは隣の部屋からだ。


 エルは壁際まで行って、壁にぴったりと耳を寄せた。



――だれか……のか。



 くぐもって聞き取りづらいかすれた声を、エルは聞いたことがあるような気はするけれど誰のものだか思い出せない。



 どうしようか。人を呼んだ方がいいのだろうか。


エルは部屋の中にある呼び出しボタンをちらちらと見て、迷った挙句にとりあえず壁をノックした。



「あのー、誰かいるん……」

 ですか。



 そう問おうとして、しかしエルは言葉を飲み込んだ。

そのとき唐突に、部屋の扉が開いたのだ。



 さっと部屋の中に滑り込んで来た人影は二つ。


昼にも会ったアレンと、黒いパーカーのフードを目深に被ったもう一人は――。



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