ラスト・ジョーカー




「ゼン、この人負担はかけないって言ってるし、いいんじゃないの?」



 エルは二人の間を歩きながら、ゼンの背に声をかけた。

すると、ゼンは心底不機嫌そうな顔をようやくエルと男のほうへ向けた。




「……おれは進路についてあんたの意見は聞かない。もちろん進度についても。

食糧についても、あんたがどれだけ飢えようが援助はしない。それでかまわないなら好きにしろ」



 ぼそぼそと、そう言ってゼンは再び前を向いた。



「やった!」



 エルはパッと顔を輝かせて、男を見た。男もほっとしたような顔をして、エルを見る。



「よかったね、……えっと?」



 なんと呼べばいいのか困って首を傾げたエルに、男は「ああ、」と呟いて、名を名乗った。



「おれ、アレンっていうんだ。アレン・キャドバリー。お二人さんは?」



「あたしはエルで、あっちの無愛想なのがゼンだよ」



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