ラスト・ジョーカー



 エルが答えると、先を行くゼンは「やかましい」と、わずかに振り返って言った。



 それに声をあげて笑って、エルはアレンに右手を差し出した。エルの両の手で、鱗も少なく爪も鋭くない、まだ人間らしい方の手だ。



「よろしく、アレン」



「こちらこそよろしく、エルちゃん。ゼンの旦那も」



 アレンはエルの手を握り返して言う。


前方から「旦那ってなんだよ……」とぼやく声がしたが、アレンには聞こえなかったようなので、エルも知らないふりをした。



(まさか、旅の仲間が増えるなんて。なんだかわくわくしてきた)




 エルはふふ、と笑うと、アレンの腕を引いて、小走りでゼンを追いかけた。



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