愛を知る小鳥
「それからは毎日が真っ暗でした。どうしてあんなことになってしまったのか、考えても考えてもわからなくて…。いっそのこと母を追っていこうかとも考えました。…でも、やっぱりどうしても母の思いを無駄にはできなくて…っ!」

「美羽っ…!」

声を震わせて涙を流し始めた美羽の体を潤は強く引き寄せた。後頭部と背中に手を回して寸分の隙間も作らせないように。その温もりに触れた途端、堰を切ったようにボロボロと大粒の涙が溢れ出す。

「それから人と接することが怖くて怖くてっ…また自分の知らない間に誰かを不愉快にさせたり、踏み込みすぎたりしたらって思うと…もう誰とも一緒に過ごすことなんてできなくてっ…」

「美羽! お前は何も悪くない。何一つ間違ったことなんかしちゃいない!」

「でもっ、あの人が変わってしまったのは自分のせいかもしれないって思ったら…」

「それは違う!!」

強い声で否定され一瞬肩が揺れる。潤はそんな美羽の背中を宥めるように摩りながら頬に手をあてると、唇までわずか数センチというほど近い距離まで迫る。

「美羽、お前は何も間違ってなんかいない。絶対に。それに、どんな理由があろうとも…」

続けようとした言葉に一瞬躊躇いが生まれるが、揺れる美羽の瞳を見つめ強い言葉で言い切った。

「あの男のしたことは犯罪だ。どんな理由をつけようとも、絶対に許されることじゃない!」

「う、うぅ~っ…!」

その言葉を聞いた途端、美羽は呻くような悲痛な声を上げて泣き崩れた。そのまま消えてしまいそうなほど儚げなその体を、潤は強く抱きとどめた。ぎゅうぎゅうに痛いほど掻き抱いて、震える小さな肩に自分の顔を埋めながら、今にも泣きだしそうな自分を必死で奮い立たせていた。
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