愛を知る小鳥
「家を出たときは正直親父が憎かったよ。もう一生会わない覚悟で家も出た。でも、長い年月が経って…」

そこまで言うと美羽の頬を手のひらで撫でていく。

「こうしてお前に出会うことができて今は幸せに暮らしてる。もしあの時違う人生を歩いてたら今の幸せはなかったかもしれないって考えると、心の底からこれで良かったって思えるんだ。だから今はもう良くも悪くも何の感情ももってないっていうのが俺の本音かな」

「潤さん…」

潤はフッと目を細めた。

「で? なんで急にそんなこと聞いたんだ?」

潤の手のひらに美羽のそれがゆっくりと重なる。

「…今日、亜紀さんに会ったんです」

「……え?」

一瞬言われたことが理解できなかったのかキョトンとして見せたが、すぐにとあることに思い当たったのかハッと顔色を変えた。

「美羽…?」

美羽は潤を見つめたままゆっくりと頷いた。

「はい。実は今日妹さんが会社に来られたんです」

「亜紀が…? 一体、何しに…」

「……お父様が倒れられたそうです」

その言葉に潤の顔が強ばる。美羽は握りしめた手にさらに力を込めた。

「亜紀さんは潤さんが家を出てしまったことをずっと気に病んでいたそうです。でも自分たちが追い出してしまったのに今更会う資格はないと。…ただお父様が倒れられて、このままでいいのかと思うようになったって」

「……」

美羽の言葉に潤は何も答えない。
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