愛を知る小鳥
そうして連れてきたのは駅から歩いて5分程の所にあるカフェバー。

「オシャレなところですね」

「でしょう? こっちに来たときには時々利用するのよ。夜にはお酒も飲めるカフェになるから結構幅広いお客さんに人気みたい」

「へぇ~」

美羽はアルコールは遠慮させてもらい、後はあかねのオススメをお願いした。

「んっ、おいしいですね!」

「そうでしょう? ここは本当にオススメの場所なのよ~」

美羽に喜んでもらえてご満悦の様子のあかねはアルコールのピッチも速くなっているようだった。

「そんなに飲んで大丈夫なんですか? この後待ち合わせなんですよね?」

「いいのいいの! どうせ帰りは遅くなるんだから。アイツの家で待ってたって一人晩酌するんだから同じことよ。でもこうやって美羽ちゃんと飲めるなんてラッキーだわ~」

アルコールの入った彼女はどうやら陽気になるタイプらしく、いつもの冷静な秘書の姿はなりを潜めていた。

「お相手の方とはもう長いんですか?」

「ん~、もう5年くらいになるかなぁ」

「そんなに? 長いんですね。ご結婚もいずれ考えてるんですか?」

「いつかはって思ってはいるんだけど…お互い仕事が忙しくてなかなか現実的な話にならなくってねぇ。相手はこの人しかいないって思ってはいるんだけど」

「そうなんですね。でもそう思える相手がいるって素敵ですね」

「私のことはいいから、美羽ちゃんはどうなってるの?!」

「私…ですか?」

「そう、専務とよ!」

あかねの投げてきた直球があまりにも予想外のことで、美羽は口に含んだカフェオレを思わず吹き出しそうになった。
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