「26歳と18歳」聡side
2話「神崎聡」
「あ、あの…!」
「…悪い!痛かったか?」
莉々野が俺に声をかけた。いつの間にか強く抱きしめていたようだった。俺は慌てて莉々野の体を離した。
「いえ…そうではなく…あなたの…お名前を教えてくれませんか?」
そういえば、まだ名前を教えていなかった…。
「俺は…神崎聡。この辺りで金関係の仕事をしてる。」
「お金…ですか…。」
「あぁ、そうだが…何か?」
「だったら納得がいきますね。」
「どういうことだ?」
莉々野は微笑みながらなにかを察したように納得している。
「お金関係のお仕事でしたら部屋がこんなに広いのもわかります。」
「お前…探偵じゃないよな?」
俺がそんなことを言うと莉々野はきょとんとした顔になった。
なにかまずいものでも聞いたか?
「あの〜…莉々野拓篤ってご存じですか?」
莉々野拓篤…聞いたことがある。どこだったかは忘れたが…。
「私、その人の娘なんです。」
思い出した!!あの探偵か!!
「ということは…推理力は父親譲りということか…。」
「多分ですがそうなります。」
納得がいく。
莉々野拓篤は有名な探偵だった。
…確か2、3年前に事故で亡くなったんだよな。
推理力と観察力は父親譲りか…。凄い奴だな。莉々野雪。
「どうかしましたか?」
莉々野は心配そうな顔で俺の顔を覗きこんできた。
「なんでもない。大丈夫だ。」
「よかった。」
優しい微笑みに変わった。
やばい…理性が飛びそうだ。
「あの…私、帰りますね。看病ありがとうございました。」
「待て!!」
「え?」
思わず腕を掴んだ。
何をしてるんだ俺は…ただ、どこにも行かせたくないとか誰にも渡したくないとか……
「ん!」
頭の中がぐちゃぐちゃになって勢いあまって莉々野にキスをした。
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