だから私は雨の日が好き。【春の章】※加筆修正版
「さぁ、やるか」
そうはいっても、顔色の悪さを見ると心配になってしまう。
櫻井さんの自業自得だとわかっていても、だ。
忙しさのうっぷんを晴らしたい時は誰にだってあるものだから。
何事も無い様に振る舞う櫻井さんに向かって、いつもオフィス内で使っているストールを差し出す。
薄い水色のそれを見つめて、きょとんとした顔で固まっている。
「そんな顔色で、一日仕事出来ると思ってるんですか?」
仕事に影響させないところは凄いと思うけれど、あまり無理をして欲しくないと思う。
今日は丁度良く他の打ち合わせも入っていない。
朝イチの私とのミーティングなんて気にせずに、午後出勤してくれればよかったのに。
それをしないところは本当に真面目だと思うけれど、心配してしまうのも事実だ。
残っている作業は元気になった櫻井さんが頑張ってくれれば、そう時間はかからずに終わると思う。
もしかして。
水鳥さんはそれも見越して、昨日櫻井さんを潰してしまったんだろうか。
いや、そんなことをするなら休みを取らせるかな。
むしろ『休んでいいよ』という代わりに潰したのでは?と、とほんの少し思う。
次の日に打ち合わせがあると、櫻井さんが絶対に休まないのを知っていて、わざとやっている気もするけれど。
それが、水鳥さんなりの『可愛がり方』だと知っている。