蒼夏の刹那
電車の切符もなぎくんが買いに行ってくれて、私となぎくんはホームのベンチで座って待つ。



「思ってたより空いててよかったな」

「うん。なぎくんとこうやって出かけるの……初めてだね」

「楽しみでなかなか寝れなかったし、今も緊張してる」

「え?なぎくんが……?」

「そう。がっかりした?」

「……ううん、全然」



私が微笑むとなぎくんは、安心したよう笑った。



電車がホームに着き、私たちはそれに乗り込む。



まもなく電車が発し、期待とドキドキで私の胸はいっぱいだった。



民家や田畑を通り過ぎ、電車が揺れる度肩が触れ合う。



ど、どうしよう……意識しすぎて、まともになぎくんの顔見られないよ〜



なぎくんも緊張してると言ってたけど、いつもと変わらないように見える……すごいなあ。



蒼といる時も、こんな感じだったな……



懐かしくて胸が痛む。



最初はうとうとしていたけど、段々意識は遠く遠く――落ちていく。



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