蒼夏の刹那
ファミレスに入るともう人がたくさんいた。席はほぼ満席状態で、ひとつだけ空いていたのはラッキーだったかもしれない。



「すごいコミコミやな……大方、おれらの学校の生徒としかおらへんけど」

「だね、蒼何食べる?」

「ん〜桜餅がデザートについとるチーズハンバーグセットやな」

「桜餅?夏なのに?」

「時季がズレとるのに珍しいやろ?おれ、和菓子好きやし桜餅やから即決や」



笑顔で好きなものを話す蒼はキラキラ輝いてる。まるで、宝石のように――



「藍花は?」

「!ごめんね、まだ決めてないの」



慌ててメニューを覗き込む私に、蒼はおかしそうに笑みを零した。



「ええよ。ゆっくり決めや」



頬杖ついてそう言う蒼がとてもかっこよく見えて、なかなか視線が外せないでいると、蒼が照れたように呟いた。



「……そんなに見られたら、照れ臭いやん」



とても幸せな時間。



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