蒼夏の刹那
蒼―ソウ―
蒼とどれくらい抱きしめ合っていただろう。



ずいぶん長い間抱きしめ合い、蒼の提案で学校の近くにあるファミレスに入る事にした。



また、あの時のように蒼はカラカラと自転車を引いて歩く。



「蒼の手はあったかいね」

「藍花の手はいつも冷たいな。冷たいのは、体に毒やから気をつけなアカンで?」

「うん」



蒼の匂い。



蒼の体温。



蒼の声。



すべてが懐かしくて、愛しくて、また泣きそうになる。



そうだよ、やっぱり嘘なんだよ。だって、蒼はここにちゃんといる。



だから、嘘なんだよ。






蒼が、いない世界が嘘なんだ。






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