蒼夏の刹那
蒼の死が受け入れられなくて、だから認められなくて――私は……そう思うと、苦しくて苦しくて仕方がない。



「泣かないで」

「無理だよ……」

「……椎名。知ってる?」

「?」

「向日葵がどうして太陽の方を向いて、咲いてるのか。太陽の神アポロに恋をした水の精が、大地に直立し9日9夜アポロを思い、見つめ続けた。でも、恋は実らず、水の精は向日葵になった」

「……ひまわり……」

「そう。その思いは絶える事なく、今も向日葵は太陽……アポロを見つめ続けてるんだ」

「今も……?叶わないのに?」

「……」



少し沈黙が流れた後、こう言った。



「それだけ好きなんだ、……例え叶わなくても、想いは変わらない」



何も言えなかった。



私は、まだこの人がわからない。



真実を知る事――それは、蒼がもういない世界を受け入れる事……だから。



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