蒼夏の刹那
優しい夕暮れの帰り道、しまったと叫んだ理由を聞いてみる。



自転車を引きながら蒼は苦笑しながら、答えてくれた。



「ああ、ちょっとグイグイいきすぎたかなあって思ってな〜」

「そうなんだ……でも、声かけてくれて、嬉しかったよ……?」

「ホンマに?」

「うん」

「そかそか。この坂道ええな〜風情あって。おれ好きやわ」

「……桜、今咲いてないのに?」

「ん〜桜が咲くその過程が好きやねん。夏、秋、冬を越えて咲くからきれいやと思える。それを見て愛するのが、桜通や」

「……桜好きなんだね」

「細かい事はわかれへんけどな」






“蒼がいない日常”






ねえ神様。






大切な人の死より、辛い事――






この世界にありますか?






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