蒼夏の刹那
海際をちょっと散歩した後、砂浜に持ってきたシートを敷く。



穏やかな波の音を聞きながら、コンビニで買ってきたものを手に取り同じ景色を無言で見つめる。



夏の終わりって事もあるのか人気はなく、まるでこの世界に自分たちしかいないようだ。



蒼がアイスを食べながら、言った。



「変やな……もう一回事故で死んでるのに、いざとなると怖いねん。また、藍花と渚と別れるのが……情けないやろ?最初からわかってた事なのにな、こうなるって」

「死は……怖くないの?」

「怖くない言うたら、まあ嘘になるな。でもおれは……藍花を失う事が一番怖いし、藍花を泣かせてしまう事が、一番辛い。死んでからも、それは変わらへん」

「自分よりも相手の心配ばかり……いつも、蒼は……」

「だって、すっごく好きやから」



そう言って、蒼は笑った。



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