蒼夏の刹那
結局朝が来るまでもう一度寝る事ができず、蒼のために何ができるのか――考えていた。



でも、どんなに考えても何も思い浮かばず思わずため息が零れる。



気分転換に散歩しようと思い、私はお母さんたちを起こさないように、そっと家を出た。



澄んだ空気を吸い込むと気持ちが心無しか、落ち着いたような気がする。



その時、前方から来た思わぬ人物に私は瞳をぱちぱちさせる。



「速水くん……」

「おはよう椎名。ちゃんと寝れた?」

「大丈夫……それより、どうして速水くんがいるの?」

「さあ、どうしてでしょう?」

「偶然通りかかったとか……?」

「どうかな」



速水くんは教える気がないらしく歩き始めた。私が戸惑っていると、速水くんが振り返る。



「オレの家おいでよ。今日店休みだし、話聞けるからさ」

「店……?」

「和菓子専門の喫茶店やってるんだよ。一応簡単なものなら作れるから、一緒に朝食どう?」

「うん!」



私が頷くと、速水くんは嬉しそうに微笑んだ。



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