蒼夏の刹那
藍花が本好きなのは知ってるんやけど……ちゃんと、リサーチすればよかったかもしれへん。



自分の調査不足を呪いながら見ていると、あるものに足が止まった。



桜色のうさぎと対の蒼いうさぎの小さなぬいぐるみ。



「……うさぎ」



いつだったか……藍花がうさぎの出てくる童話を読んでる時、うさぎが好きだって言ってたな……。



「お姉さん、これ買うわ!」



レジにいるお姉さんに叫ぶ。



メッセージカードのサビースもあるらしく、おれはお姉さんがラッピングをしてる間、悩みながら一所懸命書いた。



店を出る頃にはもう夕暮れで、昼過ぎに来たものの、まさかこんなに悩むとは思わず苦笑する。



手元にある紙袋に入ったプレゼントに目を落とし、思わず笑みが零れる。



「藍花喜ぶやろうな」






この時、おれはまだこれから待つ自分の運命を知らなかった。






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