翼~開け放たれたドア~
「お、平気だね」

理事長が言ってた通りだ、と可笑しそうに笑う飛鳥さんに、俺は首を傾げた。

「言ってなかったっけ?春輝、人が嫌いなの。理事長…えーと、雷さん曰わく、頭撫でても何もない人は嫌われてはいない証拠なんだってよー」

訝しげな俺に、飛鳥さんは説明してくれた。

雷さんというのが誰かは知らないけど。

喜んでいいところ…なんだろうな。

春輝さんの表情が変わんないからイマイチよくわかんねえ。

だけど、飛鳥さんの言うことが本当だったら、とりあえず嫌われてはいないってことで。

それに、ホッとしている自分にひどく驚いた。

「だから、なんかあったらよろしく!」

「は、はい」

ニカッと笑う飛鳥さんの服の裾を握りしめた春輝さんの目の前にしゃがみこみ、目線をあわせる。

「なんかあったらいってくださいね」

そう安心させるように笑って言う。

すると、握りしめていたその手をスッと離し、春輝さんは一歩まえへと足を踏み出すと、

「……雅人も何かあったら言って。
私も雅人たち守るから」

小さな、なのに力強い声で言ってのける。

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