翼~開け放たれたドア~
と、そのとき、背筋が凍るような笑いを浮かべた…

「お二方、この状況で何言ってるんですか?」

直が静かに言い放った。

「「……ご、ごめんなさい…」」

二人揃って噛み、そのうえ震えていた。

直の後ろにどす黒い何かが見えたのは、どうやら私だけではなかったようで。

そっか、直がいるからバラバラな人たちがまとまってるんだな。きっと。

そんなことを呑気に考えていた。



「あ、そうだ春輝。迎えにきたんだ。帰るぞ」

言われてふと時計を見れば6時過ぎ。

この時間に迎えにくるってことは、…たぶん仕事がはいったんだろうな。

「…帰る」

ポツリと言えば、皆口々に「バイバイ」「またね」などと声をかけてくれた。

「…バイバイ」

そう言い残して、雷の背中を追いかけた。



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