翼~開け放たれたドア~
倉庫からでてきた小さな少女は、ふと夜の空を見上げた。

煌々とした月の光に、少しだけ目を細めた。

「随分と、変わったものだな。俺も…」

人と話すようになった。

人に笑うようになった。

人に情けをかけるようになった。

春輝にとって人は、嫌いで憎いはずなのに。

……助ける、だなんて。

それは、今までの自分なら考えられないことだった。

やっぱり、雷たちのおかげなんだろう。

なんとなく雷や龍也の姿を思い浮かべ、

「…さ、帰ろ」

白い髪を揺らし、バイクに跨がった彼女は、夜の闇へと消えていった。






春輝が空を見上げたとき、彼女の心は何を思っていたんだろうか。

“絶望”か。

それとも──……



~傍観者 side end~





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