翼~開け放たれたドア~
「……うるさい。近くで騒ぐな」

こ、こえぇ…!!

いや、さすがなんだけどさ、うん。

最恐だよな。

春輝の不機嫌オーラが、この部屋にどす黒い何かとして漂っている。

王覇の奴らも顔が青ざめている。

「ごめん、春輝…。だから、殺気しまって!頼むから!!」

そう涙目で言うと、ハァ…とため息をついてから、春輝は殺気を止めた。

あー…、助かった。

息苦しかった空間が、少しだけ和らぐ。

龍也は春輝の頭を撫でてなだめている。

すると、だんだんと春輝の目がトロンとしてきた。

足をまげ、龍也に横に寄りかかると、そのまま龍也の服を握りしめた。

春輝の寝るときの癖、なんだろうか。

誰かの側で眠るときに、春輝はその人の何かを掴む。

ちなみに、丸くなるのは季節的に寒いから。

「おやすみなさい。春輝さん」

「おやすみ、春輝」

龍也と俺の声を合図に。

ゆらゆらと揺れていた瞳が、瞼で見えなくなると、規則的な呼吸が小さいけれど伝わった。

いつも、何もかもを諦めたような、そんな顔をしている春輝。

だけどこの寝顔は、そんな春輝をあどけなく見せて、いつもいつも微笑んでしまう。

王覇の奴らも、俺と龍也も、穏やかな表情で春輝の寝顔を見つめていた。

~雷 side end~
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